早くも年が明け1カ月が経過しました。
皆様においては変わりなくお過ごしでしょうか。
1月に震災に遭われた方々には、一日も早い心身の復旧をお祈りするばかりです。

新年からの重たい気持ちを振り払うという意味もこめて、
2月14日には、バレンタインデー特別企画として、
ITエンジニアに元気を与える、以下イベントを開催いたします。

【2月14日(水)オンライン開催】「SEによる、SEのためのパワー交換会」 ~オレたち・私たち最強化計画~
https://tech-dialoge.doorkeeper.jp/events/169110

そもそもSEなどITエンジニアとは、コンピュータが大好きな人たちが半分趣味でやっている場合が多かったのですが、いまでは、いい意味でも悪い意味でも「お仕事の一つ」になり、働く環境でいろいろな課題や軋轢が露見してきています。
また、技術トレンドの移り変わりがあまりにも激しく、
ChatGPTなど生成系AIの登場でITエンジニアを取り巻く環境は急速に変化しています。
そんな環境に置かれたITエンジニアの悩みや疑問を、対話・共有する場を設けました。
顔OFF、聴くだけでもOKです。
お気軽に、ぜひご参集ください。
登録は以下から。→

https://tech-dialoge.doorkeeper.jp/events/169110

●今月のブログ
読みました:中欧の香り漂うポーランド文学『逃亡派』(オルガ・トカルチュク 著、小椋彩 訳)
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/01/25/114521

「クイーンと私」【その1】:『Queen2』
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/01/20/110000

当社株式会社ツークンフト・ワークスは創業7年目を迎えることができました
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/01/11/090000

読みました:『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』(トーマス・マン著)
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/01/09/162301

●今月の雑感:どんな本を読んだらよいのかわからない ~読書と関心について~
先日、本に興味を持つ20代後半男子と話をする機会があった。
彼から「どんな本を読んだらよいのかわからない」という質問を受けた。
本人は、テレビやSNSから関心を得た情報を本で深掘りしたいのだが、
なにから読んでよいのかわからない、というのである。

ちょうどこのころ、ニュース番組を見ていたら、中高年のコメンテーターが登場し、刻々と変化するパレスチナやウクライナ、ミャンマーの情勢に目を向け、
こういった紛争がなぜ起こっているのか、とくに若い人たちは関心を持ち、本を読んで認識を深めてもらいたいと語られているのを耳にした。
双方で出てきた「関心」という言葉は気になっていた。

上記、20代後半男子の、本へ目を向けた判断は正しい。
テレビやSNSのそもそもの目的は、受け手に深い認識と判断力を与えるところにはない。
視聴率とPVの獲得で、バズれば情報発信者に収益が上がる仕組みである。
「誰得か?」を考えれば、その答えは明確だ。

「どんな本を読んだらよいのかわからない」はたびたび質問されるが、
私は「〇〇という本を」と具体的な答えをあまり出さない。
理由は、「どんな本を読んだらよいのか?」にたどり着くプロセスこそが、
その人の関心と本との出会いによる認識を深めてくれるからだ。

▲「フック」としての情報が多すぎ
興味のフックとなる材料としての情報は世の中にあふれている。
テレビやSNSで流れている情報はそうだし、
書店で平積み面陳になっている書籍たちもそうである。
そして、世の中に露出されている情報の大半は、興味のフックでとどまっていることも事実である。
ゆえに、意識が少し高くなった人はその事実に気づき、
「どんな本を読んだらよいのかわからない」という疑問にたどり着く。
そしてYouTubeを観たりGoogle検索をしたり、ChatGPTに質問したり、
と行動する。
これにより疑問を解消しようとし、さらにハマる。

こういったデジタルによる知の獲得は、デジタルならではの利点は大きいし、決して間違った方法ではない。
本などのアナログ情報にばかり依存するのも好ましくない。
しかし、アナログ情報ならではの強みやメリットが大きいことも事実だ。
それらにぼんやりと気付いた人たちが、「どんな本を読んだらよいのかわからない」という、次なる課題に突き当たるのである。

そもそも、なぜ世の中の情報として「興味のフックとなる材料」が乱立し、「どんな本を読んだらよいのかわからない」という混乱状態を引き起こすようになったのだろうか。

▲権威と実体は意識して識別する
テレビ番組やSNSのように、情報そのものが商品化し、取引が発生しビジネスになり、「誰得?」の方向が受け手ではなくビジネスの主体へと向かっているところが混乱状態の大きな原因である。
が、大きな原因がもう一つある。
それは、「中身の伴わない権威」である。

上記の「誰得か?」にもつながるが、著者やテレビのコメンテーターの発する言葉に、残念なことに中身のないものが多い。
他人の受け売りだったり、過去の現象を巧みに語るだけなど、
「ネットの記事を読めばいいじゃん」レベルの言葉は、しばしば耳にする。
これは、発する人が持っている権威が、あたかもその言葉に中身があるものだという錯覚ないし催眠状態を受け手に与える「権威催眠」現象によるものだ。

編集者や版元経営者、ITエンジニアなど有志で定期的に読書会を開催しているが、そこでもたびたび、権威催眠は話題に上がる。
過去のベストセラーを選書したり、そのときのベストセラーをたたき台に議論することがある。
明らかに、作者の肩書や見た目、生い立ち、国籍、氏名の字面、神秘的な経歴を通した権威催眠で、中身の薄い情報の羅列や文体で、意味のある本であると受け入れられてきた書籍を、メンバーたちと具体的に多数確認してきた。

権威とはそもそも、実体から生まれてきたものである。
医師に権威があるのは、立派な人が多いからだ。
過酷な状況下で、人命のために身を削って活動する医師たちを何人も見てきた。
半面、権威を傘に、人命よりもビジネスに没頭する医師もいたし、ほとんどやる気がない無気力な医師もいた。
宗教家や法律家も同じだ。
平和や平等に人生を懸けてきた多くの人たちから権威が生まれてきた一方で、権威を傘に、暴力や犯罪に走る人たちがいるのも事実だ。経営者もまた同様
である。

▲「わかったふり」をする限り、永遠にわからない
「どんな本を読んだらよいのかわからない」に対する一つの答えは、実体の見えづらいわけのわからない権威に対し、「わからない」と、正直に反応することだ。
権威催眠にかかり、わかったふりをすることは危険であり、その限りにおいては「どんな本を読んだらよいのかわからない」状態から抜け出すことは難しい。

個人的な体験を告白すると、
本の「古典」は権威の象徴であると長い間思いこんでいた。
J.W.ゲーテを読んで偉ぶる大人には絶対なりたくないと思っていた。
実際、学生時代にゲーテを読んで、「古典」というバイアスで脳が拒否反応を示し、作品を受け入れることはまったくなかった。
いわゆる、拒絶に向かった権威催眠である。
F.カフカも当時はまったくダメだった。
セールスマンが朝起きたら甲虫に変身していて、だから何なのだ、どこがおもしろいのだと思っていた。
これは、権威ある人が評価しているから、自分も評価しないとバカだと思われるのだろうという権威催眠にかかり、作品を素直に受け入れる心にブロックが
かかっていた。

長い年月を経たいまでは、ゲーテもカフカも、読めば読むほど作品から味わいがにじみ出る素晴らしい作品を書く家だと、愛読する。
バイアスを取り外すことで、作品の価値を正直に受け入れられるようになった。
古典は、権威とはまったく別の次元で作品評価がなされたからこそ、
時代という強烈な風雪に耐え、現代にままで残ってきたのだと、ようやくにしてわかった。

これに付随し、本を生き生きと語れる人や場が少ないことも、
「どんな本を読んだらよいのかわからない」の要因である。
本を生き生きとオープンに語れる社会的な雰囲気があまりないのではないか。自分の趣味や傾向をさらけ出してしまうのではないかという不安、
もしかしたら勉強不足だと思われてしまうのではないかという恐怖など、
さまざまな精神的なブロックが発動するからではないか。
そもそも、読書=お勉強、と思っている人は多い。
読書は心の栄養補給、と語る人もいるが、これは一部の読書家の言葉である。

▲愛という名の関心と本
「どんな本を読んだらよいのかわからない」に対する最後の答えは、前述の「関心」という言葉につながる。

本は情報であって情報でない。
人間と情報の中間にある対象だ。
そして対象へと向かう出発点は、自発的な関心である。
関心とは、興味、好み、視線、意志、意図、問い、など、
人が持つ能動的な心の状態だ。
そして、関心の反意語は、無関心である。
無関心という言葉は、愛という言葉の反意語と同じである。
愛の反意語は憎しみではなく、無関心である。
つまり、愛をもって、人と本を語る、書店や図書館を歩き回ることで、本をめぐる風景が異なって見えてくる。
そして、本が自分に接近してくる。
これが、「どんな本を読んだらよいのかわからない」を解決する本質的な解である。
愛をもって、本と接近しよう。

* * *

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ここまでお読みいただき、深謝いたします。

心動かされる、自由な明日が見えますように!

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