直近で全国を沸かせたのは、日本初の女性内閣が誕生したことでした。
アメリカも中国もやったことがない女性領主を選出することを日本がやったのはある種の快挙です。しかも若い。
ご年配や男が力を持つ日本の政治に新しい可能性が開いたのはとても素晴らしいことです。
国会ではITと縁の深いスタートアップに関する発言がされていました。
ITやスタートアップといった、新しいものに光が当たる久々のチャンス、という印象を受けました。
世界はリフォーム中ですので、この機会にぜひ日本もリフォームされたらと考えております。

●今月のブログ
読みました:『開かれた社会とその敵』(カール・ポパー著)
~市民のための民主主義の教科書~
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2025/11/03/180051

エネルギーを与える人間のタイプとは?
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2025/10/27/184713


●今月の雑感
情報の内部留保はIT業界を殺す ~IT経営者は意識して業界を育てよ~
近ごろ、社内のITエンジニアがプログラミングやシステム構築などの技術情報を本などで外へ出すことに「待った」をかける企業が増えていると聞く。
企業は情報漏洩のリスクを気にしているのだろうか。それとも、従業員が本業に集中しないことを気にしているのだろうか。その真意を聞いてみたい。

▲知の流通が失われた30年
2000年代前半までは、企業がITエンジニア向けの技術書を書いたり、技術を学ぶ場を提供したりという流れがあった。
ITエンジニアが半業務・半個人で、技術研鑽のために技術書籍の執筆を推奨する企業もあった。
それは、企業のITエンジニアが持つ技術力の高さと学びへの理解を社会に示すブランディングであるとともに、技術情報の業界共有を通した産業貢献でもあった。
あるときから、IT企業が技術情報を外に出すことが減ってきた。企業のITへの熱意が薄れてきたからだろう。「事業の割に合わない」という空気が社会に流れ始めた。そしてしだいに、IT企業は技術情報を外へ出すことに関心を示さなくなってきた。
この時期と並行し、日本では「失われた30年」という空白の時間が経過していったのは偶然ではなかった。

▲「情報の内部留保」は産業の停滞を起こす
「事業の割に合わない」はおそらく、IT企業の経営者たちが高度経済成長時代の自動車産業を想起したからだ。
この時代の日本は、中国や韓国など隣国からエンジニアを大量に視察に招き入れて、工場のラインを惜しげもなく公開していた。今後の取引につながることなど、日本の工業技術を中心に共栄しましょうというアイデアが根底にあった。
振り返ると、惜しげもなく情報を公開することは、市場を作ることばかりか、商売敵の強化につながってしまった。自分がリーダーになってルールを握らない限り、このような目算外れを生む。現代資本主義の宿命である。
上記に加え、IT企業が技術情報を外へ出したがらないのは、技術情報を流通させる価値が経営者の目に見えていないからだと考えている。
言ってみたら、IT企業における、情報の内部留保である。
情報の内部留保で、次に起こることはなにか。
企業が貨幣を溜め込んで流通させないと経済は停滞し、国家は衰退する。
技術情報もこれに同じである。ビジネスでの情報は貨幣に似ている。情報は循環させてこそ価値がある。
しかし情報と貨幣には大きな相違がある。貨幣は移動するだけで消滅することはない。一方で情報は、保守運用のリソースを投下しない限り、必ず、跡形もなく揮発してしまう。

▲IT経営者は技術情報の流通に投資し、業界を潤すこと
IT業界は技術情報を消費し、食いつくし、溶かしている。
そんな意見を、ベテランエンジニアからたびたび耳にする。
わかりやすいたとえで言えば、慢性的なITエンジニア不足である。技術情報を、業界はITエンジニア個人の属人的な知識に依存している。
したがって、ITエンジニアが退職するとともに技術情報は揮発する。
そして、企業はITエンジニアの再生産を行わず、小さなパイを食い合う。稚魚を放流せずに漁獲だけしている。
そんな状態だ。これが、いまの日本の慢性的なITエンジニア不足の構造である。
では、ITエンジニア不足はどうしたら解決できるのだろうか?
企業でのOJT(実地研修)が育成に機能していたのは遠い昔の話だ。専門学校も多数ある。しかし、現場の最新技術情報を教えられる講師は希少だ。
また、そのためのテキストも少ない。講師が自前で作成したテキストが配布されていることも少なくない。このような状況を打破するために、IT企業ができることはなにか?
技術情報を通して業界強化に貢献するITエンジニアを育てることだ。

▲IT経営者はエンジニアの知性に投資せよ
ITエンジニアは道具ではない。血の通った生きた知財である。
業界強化に貢献したITエンジニアに対して企業がまず第一にできることは、お金、つまり賃金でITエンジニアに意思表示することである。業界への貢献度は目に見えづらい。
これを見極めるのはIT企業経営者の感性だ。
求められるのは、経営者としての「知」への投資だ。
これによる業界への投資である。パイの食い合いに参戦するのか、ITエンジニアの育成という知の循環の貢献へとシフトするのか。
どちらを選ぶかは、経営者の感性に依存する。
IT企業の経営者がいますべきことは、日々必死に学び、感性を磨くこと。
IT企業は、営業活動で得た機密情報を守り、かつ積極的に、業界の財産として技術情報を流通させることだ。技術情報は内部留保するのではなく、社会に「与える」こと。与えることから、貨幣のように、健全な循環が始まる。
技術情報を下支えする知は、ITエンジニアという人材と彼らの学び、そして学びを下支えする情報という、3つでできている。
さらにこの情報は、本やブログ・SNS、YouTubeといった、メディアで構成されている。これらを活用し、技術情報をアウトプットすることだ。
技術情報の業界へのアウトプットが減る限り、技術情報は企業内で溶けてなる。そしてIT業界は死んでいく。
IT企業が、技術情報の業界へのアウトプットをITエンジニアに促すことは、社会への投資である。社会への投資なしに、業界が繁栄することはありえない。

▲分断の時代にこそリベラルアーツを学び、感性を磨く
いま、IT企業は、どのような方向に向かっているのだろうか。
細分化された業務知識の中で顧客を取り合い、囲い込み、一人勝ちを目指す時代はすでに終わっている。
いま、世界の経営トップは、リベラルアーツに関心を示している。
リベラルアーツとは、歴史と共に分断された学問の境界を取り払った、横断的な知識のことだ。
経営者に数学や簿記、マーケティングの知識はもちろん大切だが、とくに、知性で商材を作りだすIT企業の経営者にとっては、古今東西の絵画や文学などのアート、歴史、哲学など学問に関する横断的な知識も、同じぐらいに大切である。
いまのような分断の時代に生きるIT企業の経営者こそ、リベラルアーツを深く学び、横断的な知識を身に着けていただきたい。
これによりIT企業の経営者は、エンジニアの知識の集合体である技術情報で収益を上げ事業を回していることに改めて気づかされる。
こうした気づきは、行動変容のきっかけになる。
しかしながら、知識のほとんどは、AIがストレージ上から即座に取り出してくる。経営者という一人の人間が持つべきは、その一段上を行くもの、つまり、教養である。
知識が教養に切り替わるのは、その人がどう学んだか、学びにどう向き合ったのかという、その人の人生で形成された人格へと知識が反映されたときである。
IT企業の経営者こそ、教養を身につけ、産業の脳と血管をつかさどるITエンジニアを自分の身体のように重宝していただきたい。
そのうえでITエンジニアの育成に尽力し、業界を活性化させ、事業に収益をもたらしてもらいたい。
ひいては、ぜひ、かつてのように、日本のIT産業を、世界の仲間に入れるレベルにまで押し上げていただきたい。それを強く願っている。

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