日本で内閣総理大臣が代わったと思ったら、アメリカではトランプが大統領になりました。
みなさまにおいてはいかがお過ごしでしょうか?
相変わらず世の中は激変しています。
円安がさらに進むだろう、イーロン・マスクなどIT列強がトランプ陣営に使われいろいろなことが起こるだろう、など、さまざまな変化がささやかれています。ともあれ、人は変化が恐怖です。トランプのような超絶資本主義の人が世の中を支配すると偏った社会になる危険性もあります。
そんなとき、日本人はどういう行動をとるのでしょうか。
最後に、私たち有志編集者で運営する読書会に関し、季刊誌『大学出版』に寄稿させていただいたことをご報告します。『大学出版』(2024年11月秋号)に、私の読書会論「「師範」のいない読書会」が掲載されました
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/11/09/124541
活動11年目になる本読書会の紹介や、読書会にまつわる論考を書きました。
いまブームである読書会の1つのカタチを、本誌でご確認いただけたらうれしいです。
11月末には全国の書店や大学生協に配本されます。
ぜひ、お手に取っていただけましたら嬉しいです。
●今月のブログ
7つの執筆マネジメント ~書くという 実務のトリセツ~
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/10/20/102316
●今月の雑感:出版起業・独立のノウハウ ~はじめ の一歩編~
最近は個人で小さな書店を開いたり小さな出版社を立ち上げたりなど、出版業界の人たちの行動に異変が起きている。
先日、取次大手のトーハンが小さな書店に向けた配本サービスを提供すると報じられていた。副業での書店経営やカフェに併設した個人書店など、自由な形態の書店運営が期待できるという。
働き方が多様化した社会の流れから、出版をめぐる仕事の多様化が反映された結果である。
これからもますます、さまざまな要因から、出版をめぐる仕事で起業・独立したりなど、働き方の選択肢は広くなった。働き方の多様化にとどまるところはない。
そこで今回は、私自身が出版の仕事で起業した経緯と、そこから感じたことやお伝えできることを、以下にまとめてみる。
出版の仕事で企業・独立したい人の参考になれば幸いである。
▲起業のきっかけ
私が出版物のプロデュースと企画編集制作の事業を起業したのは2018年1月で、年が明け8年目になる。これまでの流れを簡単に振り返ってみる。
漠然と起業を意識しはじめたのは2000年ごろ。
実行にいたるまで20年近い月日が流れていたことになる。
なぜ私が起業を考たのかというと、版元での仕事を「なんか変だな」と感じたことがきっかけだ。独立した人からはよく耳にするが、この違和感が重要である。
本当に感覚的なもので、おそらくこのとき、他人にこれを口に出したら、「そんなの考えすぎだよ」「どうでもよい」と一蹴されるたことだろうだろう。
しかし、こうした小さな違和感こそが、起業・独立のきっかけになることは間違いない。
私が最初に持った違和感は、周囲から実績と能力を持つ編集者や営業マン、書店員たちがあっさりと引退していくのに気づいたことだった。
本づくりや書籍の販売など、本にかかわる仕事は本来専門的なものだと思っていた。そうした専門職に就いた人たちがなぜあっさりと現職を捨てるのか、不思議でならなかった。
業界縮小に伴うよくある現象なのか、各人の個人的な事情なのか、はっきりとはわからなかった。こうした、なんとなく感じたことから、小さな違和感が生まれてきた。
出版業界紙を定期購読したり、営業マンと書店に同行したり、休日にも書店に通い書店員と仲良くなったり、しまいには書店で私が担当した書籍を立ち読みする人にお声がけして意見を聞いたりなど、業界から湧き上がる違和感が何物なのかを探ろうと、さまざまなことをした。
Webやメール、SNSを使ったアンケートで読者の声を集計したり、会議室で出版セミナーを開催し著者と読者双方の声が出る場を作ったりもした。
活動を続けていくと、違和感の解像度がしだいに高まってきた。
これはどうも、単なる業界縮小とは異なるようだ。こうした感覚がしだいに湧き上がってきた。
本の作り方から売り方まで、読者の多様化した感覚と出版物との間の根底にズレが生じ、業界構造が根本的に変わった姿が見えてきた。
そのあたりから、出版起業に向けたさまざまな考えが浮かび上がってきた。
▲出版業界と巨大コンピュータ
出版業務の効率化は多数の従業員を食べさせるための手段とはいえ、そもそも出版社に多くの従業員が必要なのだろうかという本質的な違和感も得るようになった。
いまのように、書店も出版社も小型化していく現象は、このころ前から見えてきた。この現象はコンピューティングにたとえるとわかりやすい。
その昔、メインフレームという巨大なコンピュータが、経理や物流、人事管理など、あらゆる情報を処理し、企業や組織の運営を支えていた。
いまでも銀行や大企業では根強く使われているが、社会全体から見るとほぼ絶滅状態だ。
ユーザーの欲求の多様化は、技術革新とともにコンピュータの小型化や高性能化へと実装された。メインフレームはサーバーと個人が持つパソコンのセットになり、さらにはパソコンは手のひらに乗るサイズにまで小型化した。
巨大化しすぎた出版業界もこれに似ている。
しかし業界は、生活する人間が構成するものである。コンピュータのような機械ではなく、技術革新でどうにかなるというものではない。
業界が変わることは労働体系を変えることであり、給与体系が変わることである。そして、人の生活が変わる。
住む家や食べ物の質、睡眠時間の長短、メンタルの状態、休暇の過ごし方、家族の幸福から子供の将来にかかわる進学先まで、すべてが変わる。
出版業界は、こうした変化を拒否した結果、社会の構造と相対的に違和感のある業界になったのだと感じるにいたった。
コンピュータのように細分化されてしかるべき出版業界の姿を、私はあるときから「出版のクラウド化」と呼ぶことにした。
出版業界もコンピュータのように小さなものの集合体になる。
いまはその過程を通過する長い時期なのだと意識しながら、この事業を続けている。
起業・独立を考えている人に、事業計画や資金調達はもちろん重要である。
しかしそれよりも、上記のような違和感をキャッチする感性を大切にしてもらいたい。そして動き、違和感の解像度を上げる検証をしてもらいたい。
上記、出版起業の個人的なきっかけやその後にどんな行動をとったのか、簡単にまとめてみた。
次に、実行してみて気づいた、起業・独立の良い点、悪い点をまとめてみる。
▲出版起業・独立のよい点、悪い点
起業・独立は個人の感性からはじまる。
そのため、よい点、悪い点は一概には言えない。
私が感じたものから、以下に述べていく。
〇よい点
・経営方針から企画まで、自己決済できる
・会社員時代にはまず会えないような人と会えたり話したりができる
・世の中の激しい変化に対応できる
〇悪い点
・営業や経理、総務から出版制作実務まで、すべて自分でやる必要がある
・上記に関連し、一つの仕事に集中しづらい
・肩書や会社の看板の効力が弱い
これら2点はつねにトレードオフであることは言うまでもない。
次に、上記に通じる一般論と重なるが、独断と見聞から、起業・独立に向いている人、向いていない人をまとめてみる。
▲出版起業・独立に向いている人、いない人
〇向いている人
・自発的になんでもやってみたい人
・実現したいことが先でお金や人脈は後の人
・人とのコミュニケーションが好きな人
〇向いていない人
・営業や総務、販売など、自分のテリトリー以外の仕事をしたくない人
・月給や有給休暇などを安定的に得たい人
・他人からの命令や指示がないと動けない人
「“よい点”が得られるのなら“悪い点”のリスクを取ってよい」という人は、出版起業・独立に向いている。
言い換えると、「なにをリスクとみなすか」といった価値観の位置が、起業・独立の向き不向きを決定する。
▲「内発性」はすべての原点である
月給収入と会社の看板を保持するために受け身であることほどのリスクはなく、いまの組織から動かないことこそリスクだ、と断言する人は、出版起業・独立を考える価値は高い。
起業には最低300万円の資本金が必要であるとか、起業にはこれだけの資産と実績が必要だ、などというハードルはいまはない。
企業に失敗して人生を棒に振ったという話もあまり耳にしなくなった(逆に「もっと早く動いておけばよかった」という声はたびたび耳にする)。
それだけ時代は変わり、働き方は大きく変わった。
出版起業・独立のエンジンと燃料は「これを実現したい」という健康で内発的な気持ちだけだ。
私のいまでも変わらない出版起業のエンジンと燃料は、本はもともと自由なものであるから、作り手と読者が本心から作りたい本を作り、読みたい本を読み、互いに交流しながら本を作り、人に伝える内容を高め合う場を作り、読者と著者の垣根を取り払う、であった。
そして起業した理由は、上記を実現するために多くの人や企業とつながりを持つ場としての法人を作りたかったからだ。
▲やっておいて損はない ~コミュニティをつくる~
最後に、これだけはやっておいて損はないという、私の経験からの一言を付記する。
それは、自分が仕事にしたい内容(書籍や書店、業界の研究など)をテーマに据えたコミュニティを構築することである。
起業・独立をしたい人は、事前にコミュニティを「起業・独立準備室」的に作っておくことをお勧めする。副業が認められている会社に勤めているのなら、副業としてコミュニティ運営に携わってもよい。
周囲で事業が継続・成功している人の多くは、なんらかの形でコミュニティづくりに関与している。「コミュニティを作ればこれだけ儲かる」などの短期的な定量化はほぼできない。
それゆえに、やらない人は多い。
しかし、月次のイベントやメルマガ、週次のブログ更新など、自律的で定期的な行動を外部に見せることには一定の効果がある。
その裏付けとして、マーケティングで「タッチポイント」という、お客さんとの接点を表す用語がある。
会社勤めと比した起業・独立の大きな違いは、お客さんと直接接し、やり取りし、取引を成立させるといった、ビジネスの循環のすべてに関与する必要があるところだ。
コミュニティというタッチポイントがあれば、お客さんには起業・独立したあなたの顔が見える。お客さんは、顔の見えない人との取引に躊躇する。
また、コミュニティというタッチポイントからは、情報が集まってきたり、意外なお客さんや新しい企画との出会いもある。
スピード化の時代だからこそ、根気が必要で、時間がかかり、効果が瞬時に見えづらいものへと粘り強く力を注ぐことへの価値は、相対的に高まる。
とくにこれからAIが社会の表舞台に出てくればくるほど、ますます、こうした泥臭い人間ならではの活動に価値が置かれる。
これから、編集や校閲、配本計画までをAIが自動で行う。
出版業務の効率化において人間がAIに勝つことはできないし、競うという発想自体に意味がない。だから、泥臭い人間ならではの活動に価値が置かれるのである。
出版社の立ち上げや書店経営、編集プロダクション、デザイン事務所創立など、「出版のクラウド化」の時代、決して戻ることのできない一度きりの人生において、起業・独立に舵きりする出版人たちが増えることだろう。
そしていつかは私とつながり、共に出版の未来を仕事で実現できることを願っ
ている。
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今後も、さまざまな対話と交流の場の提供を計画しています。
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ここまでお読みいただき、深謝いたします。
心働く、気持ちの良い明日が見えますように!
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