8月は、三密回避という状況下でバウハウスの美術展が盛況だったり、
リモートワーク化が進む中でのプチ地方生活を体験するなど、
いままでに味わったことのなかった独特の夏を過ごしました。
皆様においては、どのような8月だったでしょうか。
休暇やレジャーなど、本来は自由だったはずの夏が制約に満ち、
その意味でも今年は独特な夏でした。

あと、8月は『ゼロから理解するITテクノロジー図鑑』( https://amzn.to/2EdPa7v )がプレジデント社から刊行されました。
私の25年間の編集人生で初の監修書籍でした。
書き手側に回ることで、出版のすばらしさ、出版の新しい可能性をたくさん発見しました。
制作チームが一丸となって作り上げた、手に取るだけでITの教養が身につく自信作です。
全国の書店でお買い求めいただけますので、
ぜひ、よろしくお願いいたします。m(_ _)m


●今月のブログ

8月30日(日)大人の夏休み一泊体験。つくばで味わった無邪気な夏の写真日記
http://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2020/08/30/224428

8月23日(日)東京ステーションギャラリーにてバウハウスの歴史を観覧。
付録:オスカー・シュレンマーのエッセイ『人間と芸術像』
http://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2020/08/23/183247

8月15日(土)バウハウス ~引き継がれるべき、一つの歴史が終わったこと~
http://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2020/08/15/162400


●今月の雑感:『なくても死ぬことはないが、 ないと困る「教養」のこと』

最近、いろいろな人と「教養」について議論する機会が増えた。
このところ、マスコミの報道に不信感を抱く人たちが増え、
ますます、個人の情報判断能力が問われるようになってきた。
その文脈で、自分を助けるものはお金や学歴という外面的なものではなく(もちろんあるにこしたことはないが)、教養という自分の内面に根差したものが重要なのではないか、
という議論にしばしば展開する。

教養がない市民たちが恐怖政治に加担するという恐ろしい歴史があり、
教養を持つことで好奇心や発見が得られ人生が豊かになる、という話もよく耳にする。
教養とはつまり、生命に直結した創造性、ということもできる。

教養はなくても生きていくことができる。
しかし、ないと困る。
いつどこで教養が自分を助けているのかわからない。
教養は試験などの数値で測定することが困難である。
そして、教養の定義自体が難しい。
そのうえ、教養という言葉は鼻につく。
なんとなく「上から目線」にとらえられがちなのが、
教養という不思議なコトバである。

外面と内面の成長
しかし教養とは、もっと、私たち個人に近いものであると言いたい。
知恵、に近い。

ドイツ文学のお家芸に「教養小説」(ビルドゥングスローマン)というジャンルがある。
これが最も「教養」を説明しやすい。
ここでいう教養とは、一言でいえば内面形成である。

教養小説の主人公は、さまざまな出会いや別れ、希望や失望を潜り抜け、
人生遍歴を経て内面的に成長していく。
その成長そのものをテーマにした作品が教養小説である。
その本を読めば読者に教養がすぐ付く、というものとは
異なる(ある意味、作中の人物の成長を疑似体験するという意味で、教養はつく)。

作家の成長遍歴を描いたゲーテの『ヴィルヘルム・マイスター』シリーズをはじめ、
トーマス・マンの『魔の山』やヘルマン・ヘッセの『デミアン』などの作品で
教養小説のスタイルを体験することができる。

ここで登場する主人公は、社会的地位の上昇や収入の増加という外面的成長ではない。
成長するのは、内面である。
「教養」が議論される際、たびたびここに焦点が当たる。
外面的成長と内面の成長が伴わない人が、日本人の多くに見られるという点で。

日本人の知識や教養を担うはずのマスコミがこの状況だったり、
思い切った決断が下せない政治家や業界リーダーがいたり、
彼らに対して文句やアラ捜ししかできない国民がいたり、
しかもその国民は底辺ではなくそこそこの生活を営んでいたりなど。

かつては、教養の低い人間は生活力も学力も低い、
という見方が主であったが、最近はそうではない。
一流大学を卒業して社会的地位を持った人たちが教養を持たないことも多々ある。
一流大学、社会的地位、いずれも外面的成長の結果である。
外面的成長を追求した結果が、こうなった。

教養は、生きるエネルギーである
いつから日本人はこうなったのだろうか。
時短、効率主義、成果主義、規制緩和、自由競争、弱肉強食、グローバリズム。
このような言葉が言われはじめたことと関係している。

しかしいま、外面的成長への「問い」が投げかけられている。
問いこそ、人類が成長する重要なキーワードである。

気づいた人たちが絶えず社会に投げかけてきた問いが、
このような形で、新しい社会を形成する引き金になっている。

外面的成長への「問い」の一つの答えが、内面的成長である。
内面的成長を促す大きな材料が、教養である。
教養は結果であり、原因でもある。

出会った事物へ関心を持ち、好奇心を持ち、取り組み、知り、味わうこと。
そして新たな疑問を持ち、自他に問うこと。
それが、教養になる。
教養は人間にしか持ち得ない生きるエネルギーだ。

教養は礼儀や弱いものを守る心、やさしさ、強さにも通じる。
教養の力を信じること。
そして、新しい時代と新しい生き方へと向かっていきたい。

  * * *

今後もさまざまな体験と学び、対話の場を設けていきます。
状況の変化は、随時DoorkeeperやFacebookなどでお伝えします。
ぜひチェックしていただけたら嬉しいです。

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ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

今月も皆様にとって、健康で穏やかな一か月でありますように!

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