本号をもって、休刊することなくキリ番のVol.90となりました。
また、個人的な話になりますが、今年の8月をもって、私がIT出版業界に入って30周年を迎えることになります。
起業して、この業界で仕事を続けられていることは、30年前には想像もつきませんでした。
ここまで支えてくれた私の周囲、仕事のパートナー、お取引先、書店、読者など、大切な皆様のお力なしに、ここまで来ることはできませんでした。
この場をもって、深くお礼を申し上げます。
1995年6月、どうしても出版の仕事に携わりたいと、4年間続けたシステムエンジニアの仕事を辞め、8月、雑誌編集者として転職しました。
30年前の当時から考えると、ITの進化・日常化は間違いないとは思いつつも、ここまで急激に世界的な進化・日常化がなされるとは、夢にも思っていませんでした。
ITの進化・日常化が間違いないと思った最大のきっかけは、1995年、Perl言語との出会いでした。
当時会社で、大型汎用機とCOBOLで経営情報を処理していたのですが、
まったく同じ処理がフリーウェア(当時OSSという言葉はほぼなかった)とパソコンで実現できてしまうということに、強烈なショックを受けました。
いま、AIの普及で、ITの急速な進化はまだまだ続きます。
いままで想像もしなかったような未来がやってくることは間違いありません。
ITの急速な進化と相反する、出版というスローな世界で、私はこれからも仕事をしていきます。
そして、出版にしかなしえない価値提供を、これからも行っていきたいと思います。
私のIT出版業界30周年以降も、引き続きなにとぞ、よろしくお願いいたします。
●今月のブログ
重版決定:『ゼロからわかるITほんき入門+マンガ 生成AIのなかみ』
(黒川なお 著、橋本泰一 監修) ~出版チームによる「掛け算」の力~
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2025/04/30/213132
発売後2週間で重版決定:『ビジネスリーダーのための意思決定の教科書』
(川口荘史 著)の生成AI時代での意味について
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2025/04/24/212557
読みました:『千ベロの聖地「立石」物語 ~もつ焼きと下町ハイボール』
(谷口榮著) ~考古学者が書いた、「遺跡」としての下町飲み屋文化~
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2025/04/20/163140
第2回「ピアニスト髙橋望によるブックトークと音楽」を開催
~文化という場ができた稀有な一日~
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2025/04/07/130919
●今月の雑感
AIが手足を持ち、個人から宇宙にまで広がる ~MCPとその可能性の未来~
OpenAIが、標準規格「MCP」(モデル・コンテキスト・プロトコル:Model Context Protocol)を採用すると発表し、世間を騒がせている。
MCPとはなんなのだろうか。
簡単に言うと、複数林立するCahtGPTやGeminiなどのAIどうしを連結し、AIに問い合わせができる機器をあらゆるモノ(パソコンやスマートフォンだけではなく)にまで広げましょう、という標準規格(プロトコル)である。
▲MCPは「USB端子のようなもの」
ある開発者のたとえによると、MCPは「USB端子のようなもの」であるという。
USB端子とはご存じのように、パソコンなどデジタル機器に備え付けられているもので、そこにケーブルや本体を接続すると、ハードディスクやメモリ、ブルーレイ、SDカード、SSD、電源など、異種混合のさまざまな外部機器がワンタッチで接続できる。
「そんなの当たり前じゃないか」と言われそうだが、1990年代前半、それは当たり前ではなかった。
というのも、パソコン(当時スマートフォンは存在しなかった)を上記のような外部機器に接続するには、パソコンに専用の機器を購入する必要があったり、機器を使うための設定ファイルを自分で書き換える必要があったり、決してワンタッチではなかった。
そこに登場した規格が、USB(Universal Serial Bus)だった。
USBはWindows95が登場した翌年の1996年1月にリリースされ、Windows98で正式サポートが表明された。
当時は「プラグアンドプレイ」といって、「接続するだけでワンタッチで外部機器が使えます」を売りに、革命的な技術として発表された。
コンセントや蛍光灯のソケットが共通であることと同じぐらいに、画期的かつ当たり前になった標準規格がUSBである。
こうした標準をAIの世界で実現しようというものが、MCPである。
USBはあらゆる外部機器をオンライン接続できるように進化を続けた。
同様に、MCPもあらゆるIT機器とAIをつなぐために進化するという役割をになっているのだ。
▲あらゆるIT機器とAIがつながる意味
MCPを通し、あらゆるIT機器とAIがつながるとは、具体的にどういうことを指すのだろうか。
たとえば、自動車や家電などに搭載されたIoT機器とAIの接続が考えられる。
自動車の運行情報や燃料の消費情報などはMCPで共有・処理され、センターに蓄積される。
蓄積された情報は再利用されAIでさらに解析される。
自動車であれば最も安全な運転の方法や、燃費効率の高い経路などの解析・共有が可能となる。
家電であれば最も安全で省電力な使い方の解析・共有が可能となる。
IoT機器とAIは無線で接続されるため、事実上、IoT機器が収集したすべての情報がAIで解析・共有されることになる。
収集される情報は、地球上にあるものに限定されない。
人工衛星、火星探査ロケットなどに搭載されたIoT機器が収集した情報は、AIにより解析・共有される。
これはなにを意味するのだろうか。
MCPを通し、地球外にも広がる膨大な情報のオープン化が実現されるのである。
MCPの普及でもう一つ考えられるのは、より個人的な情報のオープン化である。つまり、医療情報のオープン化だ。
個人の既往歴や病気の罹患リスクなどといった、人命にかかわる情報がオープン化し、共有される、ということである。
医療情報とは秘匿性の高いプライバシー情報だ。
しかしながら、こうした情報がMCPを通して共有され、活用され、人類の健康の未来に貢献する形になるとしたら、どうだろうか。
ガイドラインの設定や団体間での協議など、さまざまなハードルを超えながら、個人の医療情報もいずれオープン化する。
▲オープン化はイノベーションの発端である
ITの発展において、オープン化はつねにイノベーションの発端になる。
ソフトウェアでいうと、WindowsやMacOSはマイクロソフトやアップルが持つ商材であるが、これに対するソフトウェアとして、OSS(オープンソースソフトウェア)が登場した。
営利組織が商品として占有せずに、誰もが無料で利用し、一定の条件のもとで自由に改変・配布が可能なソフトウェアである。
クラウドで使われる標準OSの1つであるLinuxや、CMSのWordPress、それを構成するプログラミング言語のPHP、その稼働環境であるWebサーバApacheは、代表的なOSSである。
これらおなじみのOSSによるサービスなしには、ビジネスや政治経済など、情報を通した社会的なイノベーションは起こりえなかった。
イノベーションの発生には、上記のようなソフトウェアやハードウェアの新しい使われ方や考え方の進化をはじめ、それを開発・使用する人間の発想やメンタリティの進化が複雑に入り組んでいる。
イノベーションとはこうした、集合知の進化の一つの成果である。
MCPは、集合知の進化によるイノベーションをさらに加速させる標準技術である。
MCPによりありとあらゆる情報がAIに結合され、解析される。
それが当たり前になる。あたかも、USBやChatGPTが当たり前になったように。
向こう10年、情報とAIを通した人類の進化を見ることが、とても楽しみである。
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