先日、出版関係者が集まるコミュニティに呼ばれ、意見交換をする機会がありました。
出版業界では最近はAIが注目されており、書店への搬送数を算出する「AI配本」なるシステムも登場しているようです。
どんな業界でもプロの目利きや現場の見立てといった人間系の感覚はビジネス価値を生み出す源泉ですが、業界縮小に伴う人員削減で書店配本も自動化される傾向にあるようです。
上記コミュニティでは、ChatGPTなど生成AIの話題も出ていました。大手商社に勤務するリーダーの1人と話したところ、社内でも生成AIにディストピア的な脅威を持っている人が多いという意見を聞きました。
大手商社というとそれなりの情報や識見がある人が集まる組織だと思っていましたが、それでも、「生成AIディストピア脅威論」が流れているということを知り、少し驚きました。それだけ「AIが何物か」が、人に知られていないということの表れでしょう。
一つは、生成AIは「対象が見えない」という恐怖、映画『2001年宇宙の旅』で登場する「HAL 9000」の赤いランプと合成音声といった非人間的なイメージからくる恐怖です。
生成AIはプログラムなので、ITエンジニアからするとソースコードのかたまりにすぎず、処理をさせるか否かは人間の判断に依存します。「もしその判断の手がAIにわたってしまったら……」というところが恐怖の根幹です。
時代の過渡期には必ず未知のものへの恐怖が社会を覆います。いまという時代はまさに過渡期です。周囲のさまざまな変化を、新しく生まれ変わる過渡期であるととらえると、生成AIディストピア脅威論も相当なくなるはずです。
最終的に科学の舵を切るのは、人間ですので。

●今月のブログ
読書会に参加する効能について ~未知・差異との出会い、感動~
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/06/29/145255

書籍の企画書をつくるためのノウハウ② ~目次づくり編~
https://tech-dialoge.hatenablog.com/entry/2024/06/16/215914

★★以下掲載済

●今月の雑感
本を販促するためのノウハウ
企画書というと企画趣旨や概要、対象読者、目次、本の体裁といった、本そのものについて説明される文書であるが、さらにその次の、本をどのように読者に届けるかという道筋としての「販促案」を考え、記述しておくことが重要だ。販促案が考えられているか否かで、企画書のクオリティは数ランク上がる。
商業出版になると、販促は出版社の営業の仕事になる。しかしプロの出版営業でも、出版物をパッと見ただけではどう売ってよいのかわからない(ごくまれに天才的な出版営業もいるが)。その際に彼らが参考にするものが、企画書上の販促案である。
企画書の対象が商業出版物でなくても、自分が書いた本(著作)をどのように読者に届けるかを考えておくことはとても大切だ。これを考えることで、自分が書いた本がどのぐらいの人の手に届くのかというスケール感もシミュレーションすることもできる。

▲本の販促として考えられる6つの活動
書き上げられた本の販促案の具体例をいくつかあげてみたい。
なお、出版社が実施する新聞広告や書店での営業展開に関しては割愛する。
まず、販促案として一般的に以下6つがある。

①口コミ
②SNS拡散
③イベントでの拡散
④セミナーの立ち上げ
⑤インフルエンサーの巻き込み
⑥発刊後の書店訪問(商業出版の場合)

おのおのについて説明する。

▲①口コミ ~販促のキホン中のキホン~
口コミは最も原始的な販促方法である。
言い換えると、あなたがどれだけの人数に声をかけられるかが、どれだけの数の人に本(著作)を届けられるのかと比例する。口コミの手段としては②で説明するSNSが一般的に使われる。自費出版を出したら何部売れるかという質問を受けることがときどきあるが、「あなたが受け取る年賀状の数だけ売れます」という返答をある編集者から聞いたことがある。
口コミの力とはその人の人脈の強さそのものなので、年賀状の数は現実的な一つの指標になるだろう。

▲②SNS拡散 ~拡散効果が大きいネット上の口コミ~
いわばネット上の口コミがSNS拡散である。
X(旧Twitter)やFacebook、Instagram、note、LINE、Bluesky、YouTube、TikTokなど、ネット上に情報を拡散する手段はたくさんある。
ここで重要なのは「フォロワー数」である。この数が多ければ多いほど拡散力が高い。商業出版の編集者は、執筆依頼をかける際には情報発信者のフォロワー数をしっかりと見ている。それだけ、フォロワー数は書いた本が読
者の手に届くか否かの指標となる。しかし、フォロワー数を絶対視してならないことは言うまでもない。
数ばかり多くて、発信者に対する信頼性やファン意識が薄いと、発信した言葉は伝わりづらい。もし、書いた本のPRにSNSを有効活用したいのなら、フォロ
ワー数の増加とともに、フォロワーとの信頼関係やファン関係を築くことが重要である。

▲③イベントでの拡散 ~読者にダイレクトに語りかける~
近頃はイベントの立ち上げが容易になってきた。
ひと昔前のようにイベント会社に高額な報酬を払って企画や集客を代行してもらう必要がなくなってきた。また、会場を借りずにZOOMなどオンラインで手軽にイベントを開催できるようになってきた。
具体的には、上記SNSのフォロワーや、集めたメールアドレスに対して集客を行いイベントを実施する。また、イベント開催ツールを活用する方法もある。
ちなみに私はDoorkeeperとPeatixを活用している。
イベントでは自らの著作の有効な読み方や、読者が著作から手にするベネフィットをPRするなど、参加者が参加して「得」をするような内容を伝えることである。
参加者には参加料と引き換えに著作物を進呈、というイベントもある。また、インフルエンサーを呼ぶことも拡散効果が高い。
上記、オンラインイベントを前提に話したが、より深い読者との関係性の構築を求める場合、費用や労力はかかるがオフラインイベントが最強であることは付け加えておく。

▲④セミナーの立ち上げ ~より深く読者に語りかける~
上記イベントと似ているが、セミナーの場合は、参加者にとっての「お勉強色」が強くなる。また、あなたの著作をより深く伝えるという意味合いも含まれてくる。
参加者にとっては、参加して目から鱗が落ちる状態になったり、「やってみよう」「できるかもしれない」という意識改革があるとよい。こうした意識改革を通して、「この本が欲しい」「読みたい」につながることが、セミナーの本懐である。
しかしやりすぎると、セールス大会になったりマインドコントロールにズレてくる危険性もある。さじ加減には注意が必要である。

▲⑤インフルエンサーの巻き込み ~他者の言葉で販促にレバレッジをかける~
上記③でも説明したが、イベントやセミナーとセットにしたインフルエンサーの巻きこみは拡散効果が高い。知り合いにインフルエンサーがいればよいが、いなければ有料でインフルエンサーを動かしてくれる業者もある。
しかしここでの注意点は、あなたが書いた本に対してインフルエンサーの心が本心から動くか、愛があるか、である。インフルエンサーはあなたが書いた本を本心から推薦し、あなたの本を拡散してくれるのだろうか。「有料でインフルエンサーを動かして」の場合だと、インフルエンサーの本心や愛の力が少ない場合が多い。ゆえに効果を期待するのが難しい。

▲⑥発刊後の書店訪問(商業出版の場合) ~書店員を味方につける~
以前はPOPを持参して著者が書店を行脚することが習慣のように行われてきたが、コロナ禍を境に著者の書店訪問の頻度は減少し、それがいまでも尾を引いている。
書店によって対応がまちまちで、著者が個人的に訪問することで書店員が喜んで対応してくれる場合や、「版元の営業を通さないとダメ」と著者とのダイレクトコンタクトが拒否される場合もある。こういった事情を織り込みながら、本を書いたら著者さんは書店にPOPを置いてもらうよう書店員に交渉してみたり、「近くに寄ったので」と名刺片手に「私はこの本の著者です」と、書店員に声をかけてみるのものよい。
書店員ももちろん本を売りたいわけだから、熱意の高い著者の言動に心が動かされる書店員もいる。こういった書店員たちに出会えば、著作を目立つ場所に置いてくれるかもしれない。接客の合間を見ながら書店員たちにひっそりと声をかけてみよう。

▲販促とは情熱が姿を変えたものである
このように、ざっと眺めただけでも販促には数々の方法がある。
すでにおわかりのように、そのメイン手段はネットにある。つまり、出版社の外にある。
ネットのない時代は、販促は出版社への全面移譲、もしくはオフラインでの小さな口コミしかなかった。しかしいまは違う。
オンラインのみで自主的に出版・販売し、ビジネスを成立させている著者も多い。こうした出版物はかつては「同人誌」として下ものもに見られていたが、いまでは独自の世界と市民権を得ている。
これからも、生成AIやロボットを使った販促など、さまざまな見たことのない手段が登場するだろう。販促自体がますますクリエイティブな活動になることは間違いない。
そして最後に言いたいのは、販促はあなたの情熱そのものである。
書いた本の良さを伝え、1人でも多くの人に届けたいという、情熱が姿を変えたものが販促である。ネットを使おうがAIやロボットを使おうがインフルエンサーを使おうが、それらは手段の1つに過ぎない。手段に惑わされず、自身の情熱に従うことが最善の成果を生み出す。
あなたが書いた本を世に広める参考になれば幸いである。

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